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日々の暮らしに”ハレの日”を
ハレのコト。 vol.1

2023.04.03

日々の暮らしに”ハレの日”を
ハレのコト。 vol.1

直して使うことで愛おしくなる
「金継ぎ」でより長く、ずっと大切に。

「心までハレにする服」を打ち出すMarisa Grace(マリサグレース)から生まれた、日々の暮らしをちょっとだけ特別にしてくれる“ハレのコト”をご紹介するコラムです。

第1回のテーマは「金継ぎ」。洗いものをしているとき、うっかり手を滑らせてガチャン! そんな経験、一度はあるのではないでしょうか。「もう使えないから」と捨ててしまうのはもったいない! 日本の伝統工芸、金継ぎで修復すれば、また使えるようになるだけでなく、新たな美的価値が生まれます。そんな日本のみならず、海外からの注目も集まる金継ぎのワークショップにおじゃまして、その魅力を伺いました。

[金継ぎとは]

割れたり欠けたりした器をうるしで修復し、継ぎ目を金や銀の粉で飾る伝統的な技法です。本うるしを使用した古来の技法は、複数回の塗りと乾燥が必要なため、完成までに時間を要しますが、接着剤や合成樹脂を使用することで、数時間で修復が可能に。かぶれることがなく、乾きも速く、安価という手軽さから注目が集まり、おうち時間に金継ぎをする人が増えているといいます。この日のワークショップもキャンセル待ちが出るほどの盛況でした。

[金継ぎの基本]

材料と道具
・新うるし
・金粉
・薄め液
・瞬間接着剤
・エポキシパテ(陶器用合成樹脂)
・スポイト
・紙やすり
・筆
・パレット
・竹べら
・カッター
・ウェットティッシュ

1.まずは、細かい汚れを取り除く作業から。表面がザラザラしていると、パテがうまくつかないので、濡れたタオルなどで拭き取ります。器が割れている場合は、破片が揃っているかどうか、一度組み立てて確認しておきます。

2.欠けた部分をパテで埋めます。最初は薄くつけ、竹べらで平らにしながら少しずつ重ねていくのがコツです。器が割れている場合は、パテをつける前に瞬間接着剤で貼り合せておきます。

3.パテが硬化したら、カッターで余分なパテを削り取り、表面をやすりがけします。器が傷つかないように、紙やすりに水をつけながらやするのがポイントです。

4.金粉と新うるしを1:1で調合し、薄め液を混ぜます。薄めたときの硬さはマニキュアくらいが目安です。筆でよく混ぜたら、パテの上に塗っていきます。

POINT
金粉と銀粉があり、金銀をミックスして使うこともできます。手前にあるかけらが色見本です。金は華やかに、銀は渋く、金銀ミックスはどんな器にも馴染みのいい色になるといいます。

POINT
ヒビが入った部分にはパテは使わず、新うるしだけで修復します。あえて修復したあとを見せることで、偶発的な美しさが楽しめるのが金継ぎの魅力です。

5.このまま1〜2日自然乾燥させたら完成です。

[金継ぎで生まれ変わったみなさんの器]

1.一目惚れして購入したという高台つきの大皿。「欠けてしまって残念でしたが、捨てなくてよかった!」といいます。金がアクセントになることで、ハレの日の食卓にもぴったりな器に生まれ変わりました。

2.海外輸出用に作られたアンティークのカップ。5セットあるうちの1個が欠けてしまって、がっかりされていたそう。ブルーに金色が映えて、美しく蘇りました。

3.注ぎ口の部分が欠けてしまったという備前焼のとっくり。もともと金色の装飾が施されているので、金継ぎがよく馴染んでモダンな印象に。

4.骨董品店で見つけたブルーのお皿は「欠けても味」と思って使っていたそう。白い器は「いただきものなので、欠けても捨てられなかった」といいます。どちらも、新たな模様が生まれて、より味わい深いものになりました。

お話をうかがった「金継ぎの柳家」の柳澤綾佳さん

「金継ぎができると、好きな器を普段使いするのが怖くなくなる」という柳澤さん。「以前、金継ぎ師の方に依頼したことがあるのですが、1年待ちで、費用も1万円ほどかかったにも関わらず、また割ってしまったので、自分で直したいと思い、金継ぎの方法を習得しました」。大切な器が割れたり欠けたりするのはショックなことですが、金継ぎができれば、再生する絶好の機会と捉えられるかもしれません。「金継ぎという日本文化を通じて、暮らしを豊かにできれば嬉しいです」。そんな柳澤さんの言葉から、モノを作ること・直すことの楽しさを大切にしていることが伝わってきました。

プロフィール

大学でデザインを学び、卒業後は広告代理店、インテリア会社を経て独立。現在、フリーのグラフィックデザイナーとして活動する傍ら、東京・神奈川を中心に各地で金継ぎのワークショップを行っている。

https://kinyanagiya.com

「金継ぎの柳家」さんでは、「かんたん金継ぎキット」をネット販売しています。説明書の他に、金継ぎのやり方が詳しく説明された動画も公開されているので、映像を見ながらスムーズに作業することができます。

撮影:竹下アキコ

取材・文:鞍田恵子

撮影協力:日本料理 昭和の森 車屋

https://kuruma-ya.co.jp/shop/showa