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日々の暮らしに”ハレの日”を
ハレのコト。vol.3

2023.06.01

日々の暮らしに”ハレの日”を
ハレのコト。vol.3


「心までハレにするMarisa Grace(マリサグレース)」と
「忙しい女性を応援するSTORY(ストーリー)」から生まれた、
日々の暮らしをちょっとだけ特別にしてくれる
“ハレのコト”をご紹介するコラムです。

第3回は、東京・世田谷区にある仕立て直しショップ「リカキカク」を訪れました。
服のサイズが合わなかったり、デザインが古く感じたりしたとき、お直しをしてくれるお店ですが、 いわゆる大手チェーンのリフォーム店とはどこか趣が違う……。その理由を知るために、店主の関 利佳さんにお話をうかがいました。

 

リカキカクがあるのは、世田谷線・上町駅から徒歩9分ほどの世田谷通り沿いにある古いビルの1階。 テーラーのようなスタイリッシュな店構えのお店です。 「いつかは自分のお店を持ちたいと思っていましたが、一人で始めるのは不安でした。 そんなとき、知人を通じてこの場所に出合い、間借りさせていただくことになりました」。 ここは以前、服を作る人たちが出入りするアトリエ兼ポップアップショップだったそう。 2022年、それぞれが新たな場所に活動の拠点を移したのをきっかけに、一人で活動を始めたといいます。

 

服飾専門学校でパターンを学んだという関さん。しかし、すぐにはアパレルの会社に就職しなかったといいます。「アパレル業界に憧れはありましたが、まだ迷いがあって、学校を卒業してすぐは飲食店でバイトをしていました。今思うと、そのときの接客の経験が今の仕事に役立っているのかもしれないです」と振り返ります。

 

その後、希望の条件に合う会社に就職し、商品企画、デザイン、パターン制作、サンプルや展示会の手配など、アパレルの会社で必要な仕事は一通り経験したといいます。今も、型紙制作やオーダーメイドの依頼を受けているのは、そんな実績があったからだと納得しました。

 

アパレルの会社を退職したあと、「藍染の裏毛(ウラケ)を作りたい」という思いから、ファクトリーブランドの立ち上げに参加したり、バンドの衣装の制作をしたり、活動の場を広げていったといいます。その後、リフォーム店で働くように。「そこは出来高性だったので、しばらくフリーランスとして活動していました。その頃出合ったのがこの場所なんです」。

 

リフォーム店で働いていたときは、接客はしていなかったそうですが「お客様の要望がうまく伝わらないこともあり、接客の大切さを実感しました」。一口にお直しと言っても修理の方法は様々。「人それぞれ要望や気になるところも違うので、一人ひとりに合わせた提案をしています」。いわゆる服のリフォーム店とは少し趣が違うとお伝えしてみると、「普通のお直し屋さんですよ」と笑います。「でも大手チェーンのリフォーム店のようにマニュアルがないので、断ることはほとんどないです。ほかで断られてしまった服をお持ちになる方もいらっしゃいます。お客様との対話からヒントを得ることもありますね」と話してくれました。

 

「殺風景だったので、フックや道具を引っ掛けてみました」。意図せずあいた壁の穴も、関さんの手にかかれば、おしゃれに見えるから不思議。店内にある家具や道具は、もともとあったものやもらったものが多いそう。古いものを大切に使う、そんなところにもお直しのマインドが感じられます。

 

「春になると入園・入学のバッグや小物のオーダーをよく頼まれるのですが、私が作ったバッグを持った子どもがお店の前を通るときに手を振ってくれたりするんです」。そんな温かい気持ちになるエピソードから、地元民に愛されていることが伝わってきました。


[実例・スカートの丈つめが完了するまでの流れ]

 

1. お客様の依頼は丈つめ5㎝。まずはスカートをトルソーに穿かせます。

2.裾から5㎝のところを折ってまち針でとめます。裾のラインが不揃いの場合は、床から折ったところまでの長さ(床上がり)を測り、裾全体をまち針で平行にとめていきます。

3.スカートを平らな台に広げ、ボディラインテープで裾線をつなげて仮止めします。

4.裾をそろえてまち針でとめ、縫い代を1㎝つけてカットします。

5. ボディラインテープを剥がし、布端を1㎝折ってアイロンをかけます。

6.縫われていた糸に近い色の糸を選びます。

7.布端を内側に折り込みながら、1周ぐるりと端ミシンをかけていきます。

8.糸始末をして、アイロンをかけて完成です。

9.裾のラインが床と平行に仕上がりました。


[イベントに参加しながら、活動の場を広げていく]

近年、ヨーロッパを中心に修理の技術を共有するコミュニティー「リペアカフェ」が急増中。そんななか、東京・恵比寿でリペアの専門家「フリュード」主催の「服のリペアカフェ」が開催され、リカキカクの関さんもボランティアとして参加しました。


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1.「ミシンを使うのは小学校の家庭科以来」という参加者に、ミシンの基本をレクチャーする関さん。「環境問題を意識してお直しすることはありませんでしたが、そういう時代になったのだと改めて実感。こうしたイベントには積極的に参加していきたいです」。

2.手芸店「ぶたのしっぽ」を運営する株式会社ブンタデザインの斉藤貴志さんによるニットのお手入れ・お直し講座。ニットを長持ちさせるには「もみ洗いやこすり洗いをしないこと」「汚れを落としてからしまうこと」がポイントだそうです。

3.ニットのほつれ直しを実演。ニットの素材や編み方は様々ですが、基本的には編み目を少しほどいてから、新しい目を作り直していきます。表から見ると、ほぼ元通りに仕上がる職人技はさすがです。

4.「服の社会問題とお直しの重要性」についてお話しするnewR株式会社の代表取締役 中川かおりさん。無理や我慢をするのではなく、「好きな服を着る」という気持ちを大切にすることがサステナブルな消費へとつながるのだと教えてくれました。

リカキカク

住所:東京都世田谷区桜3-25-3
営業時間:12:00〜18:00
定休日:水曜日+不定休
https://rikakikaku.com




撮影:竹下アキコ

取材・文:鞍田恵子

取材協力:フリュード https://fluid-salon.com/ripea-cafe-movie

newR株式会社 https://newr.co.jp

ぶたのしっぽ https://butanoshippo.stores.jp