日々の暮らしに”ハレの日”を
ハレのコト。vol.4
包む、結ぶ、贈る。
気持ちをカタチにする、 日本のラッピング文化
「心までハレにするMarisa Grace(マリサグレース)」と 「忙しい女性を応援するSTORY(ストーリー)」から生まれた、 日々の暮らしをちょっとだけ特別にしてくれる“ハレのコト”をご紹介するコラムです。
第4回は、ラッピング教室を運営する傍ら、イベント企画や包装代行などを行う会社「toi et moi(トワ エ モワ)」にお邪魔しました。
ここには、お教室の生徒さんをはじめ、講師の宮岡宏会さんの丁寧なラッピングを求めて足を運ぶ人たちがいます。インターネットで実物を見ずにギフトを送ったり、エコの観点から簡易包装のお店が増えたりする今、丁寧なラッピングが求められるのはなぜだろう……。そこには日本の「包む文化」が深く関係していました。
近頃は環境問題への意識が高まり、そのまま渡せるおしゃれなパッケージや袋に入れるだけの簡易包装が求められる一方で、持ち込みラッピングの需要が増えているといいます。「贈る相手の好みに合わせたい」「むき出しでは渡せない」「包み方が雑だったのでやり直してほしい」など、理由は様々ですが、その美意識はどこからくるのでしょうか。
「たとえば、おにぎりを笹の葉に包んだり、ものを風呂敷に包んで運んだり、包むという行為は古くから日本人の暮らしに根付いていました。贈り物をすることで、お祝いやお礼、お詫びの気持ちを伝える習慣も日本独特の文化です」。そう考えると、包むということは利便性だけでなく、日本人にとってマナーであり、気持ちとつながっているものなのだと腑に落ちました。
ラッピングの技術やアイデアを雑誌や書籍で紹介したり、ペーパーやパッケージをコーディネートしたり、ラッピングの分野で幅広く活躍する宮岡さん。「せっかく相手を思って選んだ品物も、味気ないラッピングでチープに見えてしまってはもったいない。
きちんと丁寧に包めば、気持ちが伝わるだけでなく、ディスカウントで買ったものでも見劣りしないはずです」。宮岡さんの手にかかれば、どんな品物もワンランク上のギフトに早変わり。わざわざ遠方から足を運ぶ人が絶えないのも納得です。
美しいラッピングには、美しいペーパーが不可欠。ここには、シンプルなものからゴージャスなものまで常時100種類以上のペーパーがそろっているといいます。海外では、もらったプレゼントの包装紙を豪快に破いて開け、 相手の目の前で喜びを表現する習慣がありますが、日本では包装紙もプレゼントの一部として大切に取っておくという人も少なくありません。
「海外の方でも、素敵なペーパーで丁寧にラッピングすると、とっておきたいと思われるようです」。文化は違えど、気持ちは伝わるものなのですね。
内祝いなどに使われる和紙も豊富にストック。和紙特有の柔らかな風合いが、贈り物を優しく包んでくれます。「伝統的でありながら、どこかモダンなものを選んでいます」というように、紙選びにも宮岡さんのセンスが感じられます。
リボンはラッピングの顔。結び方ひとつで見栄えがぜんぜん違ってきます。「ウェブサイトに載せているのはシンプルなラッピングが多いので『ゴージャスなものもできるんですか?』と聞かれたりします。もちろん凝ったものもできます(笑)
シンプルな紙でもゴージャスに包むことはできますし、じつはシンプルな包み方のほうが、ごまかしがきかない分、意外とむずかしかったりするんですよね」。
「リボンの結び方にも意味があって、3は縁起のいい吉数なんです。こういう意味を知ると、贈り物を受け取ったときに嬉しい気持ちになりますよね」。
蝶結びは引っ張るとほどけ、結び直すこともできることから、結婚のお祝いのように一度きりであってほしいお祝い事にはリボンではなく熨斗や水引を使うことが多いですが、リボンを希望される方には、ほどけない複雑な結び方を提案しているそうです。
熨斗の代わりにつけることで、きちんと感が出せる水引。用途に応じて様々な結び方があり、単なる装飾ではなく、未開封の証だったり、縁結びや魔除けの意味があったりします。
水引モチーフにゴムを通せば、簡単にかけられて贈り物を華やかに演出することができます。
ちょっとしたプレゼントや、箱のままでは渡しにくいお土産や差し入れには、紙をさっと巻くだけの簡単ラッピングがおすすめ。一手間を加えることで、味気ない箱がおしゃれに見違えます。
①箱の上に紙をのせ、柄の出し方を決めます。
②余分な紙をカッターナイフで切り落とします。
③右の紙を上に重ね、右の紙の端が箱の中央にくるように両面テープで貼り合わせます。
④でき上がり。お好みでリボンをかけます。
植物、動物、スイーツなど、様々なモチーフのペーパークイリングカードを販売。「金太郎飴のように作っていると思われることがありますが、細長い紙をくるくると巻いたパーツを組み合わせてモチーフを作っています」。ラッピングに添えることはもちろん、立てることもできるので、お部屋に飾ったり、ウェディングパーティーでの座席カードに使ったりすることもできます。
その利便性と美しさから海外でも注目を集める日本のラッピング。「包む文化を次の世代に残していきたい。そのためにも、きちんとラッピングの技術を学ぶ人が増えることを願っています」と話す宮岡さん。 料理や手芸と同じように、ラッピングも上達するにはくり返し練習することが欠かせません。「自分ではうまく包めない。そんなときは私たちプロを頼ってください」と最後に心強いお言葉をいただきました。
お話をうかがったラッピング講師の宮岡宏会さん
toi et moi 株式会社代表、ラッピング講師、ペーパーコーディネーター。ラッピング教室を運営する傍ら、イベントやワークショップの開催、ペーパーやパッケージの監修など、レッスンから包装代行、オリジナルメッセージカードの販売まで幅広く行う。受講は随時受け付け中。 著書に「大人かわいいラッピング」(主婦と生活社)など多数あり、これまでに6ヵ国語に翻訳されている。
https://style-gift.net/
※持ち込みラッピングは予約制です。
撮影:竹下アキコ
取材・文:鞍田恵子